布教したいゲームの話をする

あまりにも好きすぎて布教したいゲームの話を延々と垂れ流します。

フリゲ『すでに私たちは地獄のまっただ中でした。』布教記事

 名作フリーゲーム『すでに私たちは地獄のまっただ中でした。』の布教記事です。当作品はローゼンクロイツ氏が制作したRPGです。
 あまりに独特な世界観、グラフィック、そしてそのエログロナンセンスな絵面からは想像もできないほど味わい深いストーリーと、何から何まで好みのゲームだったのでこれは紹介せざるを得ないと思い、僭越ながら筆を取らせていただきました。

 ただこのゲーム、苦手な人は苦手な描写も多いです。見ての通りキャラデザなどはAA基調の可愛らしい感じなんですが、その絵柄に似合わないくらいグロくて気持ち悪い敵とか出てきますし、ストーリーのテーマ上仕方ないのですが、えげつない性のネタなども頻発します。幼女がひどい目にあうシーンもあります。ていうかそもそも街の人が話しかけるだけで「クズ、ゲロ、ビッチ」などの汚いスラングを連発します。2ちゃんねる(今は5ちゃんねるか)特有の用語も多いです。
 そういうエログロナンセンスな世界観が大丈夫な方はぴったりハマると思いますが、ダメな人は完全にダメだと思います。この時点で無理だと思ったら記事の閲覧をやめることを強くおすすめします。


◎ゲームのあらすじ

 主人公「マルクト」は非常に見目麗しい青年です。彼は多額の借金を残して蒸発した父親のせいで男娼に身を落としており、毎日男女問わず端金で抱かれ続ける日々を送っています。そのような生活なのでマルクトは街の人からは侮蔑の目で見られ、馬鹿にされており、この世の全てを憎んでいました。
 ある日、マルクトは父親の借金を肩代わりしているローゼンクロイツ卿(作者さんと同じ名前)の屋敷に呼び出されます。男娼の仕事だろうと屋敷に赴くのですが、ローゼンクロイツ卿は実は拷問が趣味のイカレ男。マルクトは屋敷で出会ったローゼンクロイツ卿の息子「フェイ」と共に命からがら屋敷から脱出します。屋敷から逃げた先で出会った不思議な女性「ペニシア」も含めた三人で各地を冒険することになり、その過程でマルクトは自分の生まれた意味、そして世界の秘密について知っていくことになります。

◎ヤバすぎる世界観

・まず何がヤバいって、ゲームを起動してすぐ主人公が汚いおっさんに抱かれ、しかもその賃金として500円を渡される世知辛いシーンでひっくり返りました。500円って、身体を売って500円って。さらに、家の外に出て表札を確認すると「インバイ便器男の家」と落書きされています。街はなんか海は緑色でわけのわからないタコのような化け物がいて、腐ってるみたいに溶けた女の人や明らかに植物の見た目をした老人などが普通に歩いています。この時点でめまいがします。

街の人がとにかく口が悪い。話しかけたら罵られるかバカにされるかの二択です。「昨日は厳つい男に抱かれてどんな気分だったの?」などの下世話系や、「お兄ちゃんってインバイなんでしょ〜??」と子どもに聞かれる心にくる系など本当に最悪。そもそも土地が荒れ果てているために作物も満足に育たず、人々の間では秒単位で猟奇殺人が連発するくらいの世紀末なので当たり前なのかもしれない。四方八方、どこを見ても汚いとち狂った世界です。

パーティメンバーのフェイがゲイなのですが、そのことをめちゃくちゃに罵られる。これ別に作者がゲイを否定しているとかではないのですが、(実際、むしろフェイは非常に誠実な人物であり、マルクトへの想いも一途で純粋なものとして描かれています)特に序盤、フェイがゲイであることを論ってすごい勢いで罵られるシーンがあります。普通につらくなります。

「カティクル病」という恐ろしい病が蔓延しており、各地に正気じゃない人がわんさかいる。このカティクル病というのが原因不明の病であり、かかってしまったら最後、目に見えるものが全て狂って見え、最終的には発狂して、身体がおぞましいバケモノに変わってしまうとんでもない病気です。治療法なども分かっておらず、人々はこの病の恐怖に怯えています。この病にかかっている人が色んなところにいて、話しかけることも出来るのですが、話しかけてもずっと意味不明なことを言うのでひどく恐怖を覚えます。ほんとに怖い。

基本的にみんなろくな目にあわない。こんな世界観なら仕方ないかもしれないんですけど、どうしようもないクズもいたいけな幼女も等しく酷い目にあいます。後味が悪くて最悪です。

物価の高騰ぶりが尋常じゃない。どこの店に行っても消耗品から装備品まで法外な値段で売られてます。普通にやってたんじゃ買えません。ていうか店の中で婦人に「あなたみたいな貧乏人が買うものじゃない」と罵られます。殺すぞ……ゲーム的な視点で言うと消耗品も装備品も大抵の物を全部拾っていく形になります。最強装備も拾えます。親切ゥ〜!(感覚麻痺)

行く先々で人間の醜さを見せられる。これほんとマジな話、ストーリーの展開上いろんな街を巡ることになるんですが、どこもほとんどろくな人間がいないというか、人間が醜く矮小で欲深いばっかりに起こった問題に巻き込まれまくります。これでもかと言うくらい人の汚さが描かれ続けます。

 とりあえず思いつくだけ羅列してみましたが、本当に大丈夫なのかと聞きたくなるくらい世紀末でヤバい世界観です。

◎実は愛を貫き通す話

・これだけ書くとただただ胸糞悪いだけのサブカルRPGっぽいんですが、その実このゲームのテーマは「愛」だと言っていいでしょう。「人はたとえ心が違っても誰かを想い、愛し合うことができるのか」、この答えを探す物語です。

「クソとゲロと愛に満ちた魂のRPGというキャッチコピーが、この作品を本当によく表しています。明日への希望も夢もない世界だけど、でも、たしかに愛が存在することが作中で証明されます。

・好きになった誰かを全力で守る、大切な人のために自ら汚名を被る…荒廃した世界では信じられないような尊い愛が描かれます。ネタバレになるので詳しく書けませんが、この他者を思いやり、愛する心が物語のキーとなっていきます。

・やがて物語は、当初は想像もできなかったスケールに広がっていきます。最初は意志のなかったマルクトが愛を知り、最後にどう決断するか…その顛末は是非自分の目で確認していただきたいです。ちなみに、エンディングは二種類あっておそらくこちらがトゥルーエンドだろうエンディングもあるのですが、もう片方のエンディングも味わい深いです。フェイはたとえどうあろうとマルクトを愛しているのだと、そう思わせられます。


 あまりにもエログロナンセンスで奇抜なデザイン、造形が気持ち悪い敵、中二病的なセンスの紹介文などなど…この作品をなんとなく倦厭したくなる要素は正直言って結構あると思います。世界のあまりの荒廃ぶり、人々の醜さを目のあたりにして、プレイを投げ出したくなる場面もあるかもしれません。
 でも、頑張って最後までプレイしてもらいたいです。それくらい素晴らしくて、考えさせられる深い作品です。愛の尊さ、生きる意味について問いかける名作フリーゲーム『すでに私たちは地獄のまっただ中でした。』お時間のある時にぜひいかがでしょうか?